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「第四の力道具」



お金を使うと言う事は、他の本物の欲望を取り替えることで、そこで初めてその人は「自分が欲しかったのはお金ではなく、本物の欲望を遂げるための道具になるからお金が欲しかったのだ」と気付いたのです(p113)


五本能人生論によれば、欲望追及用に使用するものを力道具と言い、それは、
一、 経済力(お金、財産)
二、 権力(地位、名誉)
三、 破壊力(腕力、暴力、武力、軍事力)
の三種類であると定義されています。

五本能人生論の初版が平成2年12月16日。本文の末尾には、平成2年8月15日とあります。直江氏は初版以前より十数年にわたり執筆活動を行ってこられましたので、随分と月日が流れたことになります。しかし、現代においても「人間の五本能というものは万人一様のものである」という哲学は不変のものであると、私は確信しています。その一方で、「力道具」については、時代の変化に伴って「力」が宿るものが変わってくるようにも思います。私は三種類の力道具に加え、第四の力道具として「情報力」が台頭してきたように思えてなりません。

初版が出版された平成2年頃といえば、まだ個人向けのパソコンやインターネットは普及していない時代です。インターネットが普及したのは、Windows95が発売された1995年(平成7年)以降です。インターネットの普及以降は一気に情報化社会へとシフトしました。

1996年 Yahoo! JAPAN サービス開始
1999年 NTTドコモ i-mode サービス開始
2000年 Google 日本でサービス開始
2005年 Youtubeサービス開始
2007年 日本でtwitterが普及し始める
2008年 iphone 発表 、Facebookが日本でサービス開始
2010年 ipad発売
2011年 LINEがサービス開始
2012年 Facebookユーザー10億人突破
2014年 instagram 日本で開始
2015年 Apple music サービス開始
2017年 流行語大賞「インスタ映え」

「インスタ映え」という言葉が流行したのは意外と昔のことだったのに少々驚きます。

インターネットが普及する以前の情報源はテレビ、ラジオ、新聞などが主でした。テレビの電源を入れるとテレビ側の都合で編集された情報を一方的に聞くことになります。今と比べれば情報量も少なく、情報が流れるスピードもゆっくりでしたから、多くの方が難なく情報をキャッチすることができました。しかし、今日においてはSNSから絶え間なく情報が押し寄せ、自ら情報を得ようとせずとも、要・不要に関わらず情報が溢れています。さらに、テクノロジーの進化によって、受け手側が情報を選別せずとも、個々人にとってひびきの良い情報ばかりがキュレーションされて、目の前を通過していきます。また、情報を持つ者とそうでない者との格差が広がり続けています。デジタル化に取り残されてしまっている情報弱者の存在も重要な社会課題と言えるでしょう。

そして、2021年9月1日、デジタル化が遅れていると揶揄さるこの国でさえ、ついにデジタル庁が発足しました。アナログ社会だった日本は良くも悪くも情報弱者にやさしい社会でした。しかし、デジタル庁の発足は政府の決断を意味します。すなわち「デジタルに舵を切れ!」です。

そのような現代において、情報はなくてはならないものであり、情報を適切に得ることができなければ、社会から取り残されてしまったり、情報が足りなかったために重要な局面で失敗したりする可能性もあります。

また、情報は得るだけではなく、真実を見極めて正しく活用する必要があります。偽の情報を信じて詐欺や犯罪に巻き込まれることもありまし、適切な情報を持っていたとしても行動に移さなければ何もなりません。

つまり、「情報力」とは、「真の情報を得る力」と「活用する力」ではないでしょうか。現代では、経済力(力道具)と同様に「情報力」を使って自分が欲する目的を達成しようとする必要があるのです。仕事で成功したい、能力を身に付けたい、スポーツで勝ちたい、病気を治したい、健康でありたい、家族の安全を守りたい、大切な人を喜ばせたい… あらゆる欲求意識は、「情報力」が必要な時代になったわけです。

ところで、「真の情報力」とは何でしょうか。偽の情報、表層的な情報、改ざんされた情報、堕落を誘発するような情報…、こういったまがい物の情報に惑わされないようにするにはどうすべきでしょうか。

私が考える真の情報とは、
1. 自ら主体的に得ようとしなければ、得ることができない情報
2. 家族、仲間、健康、仕事など自分にとって極めて大切なものに対してポジティブな力を発揮する情報
3. 一見、それがなくても生きていけるが、得て行動に移せば人生が豊かになる情報

と考えます。

真の情報とは、SNSで通り過ぎていく信憑性に乏しい言葉の羅列、人の噂話、インターネットでちょっと調べたら出てくるような表層的なものではありません。人生を豊かにするために極めて重要な情報であり、情報を得るためには主体的に動かなければ得ることはできません。

例:
・家族の健康のことを考え食事について情報を得ること。テレビで見た〇〇健康法を妄信するのではなく、食べ物や調理について主体的に学ぶこと。多くの著書を読み、研究し、体験し、自ら答えを導きだした情報。

・会社で総務の仕事を任されており、与えられた職務範囲はこなすことができているが、より社員の労働環境の改善や福利厚生の充実を図りたいと思い、社会保険労務士の資格試験の勉強をすることで得た情報

・人とのコミュニケーションが苦手であるため、接客業の副業をしたり、コミュニケーション講座を受講したりすることで得た情報。

これらの情報は簡単に得ることはできません。それ相応の覚悟と努力を要します。その一方で、これらの情報がなくても今の生活には困らないため、自らを鼓舞できなければ、一生得ないものです。真の情報とは主体的に努力して勝ち得た情報であると言えます。

真の情報を活用すると、人を幸せにすることができます。自分や家族の健康を守ることができます。会社やビジネスパートナーにポジティブな影響を与えます。地域社会に貢献することができます。

情報力とは、「真の情報を得る力」と「活用する力」がセットであり、情報力を使うことで、本能から発する欲望と取り替えることができます。このような理屈により、情報力が第四の力道具ではないか、と考えた次第です。




このコラムを書いた人:杉山英治

企業ブランディング戦略構築コンサルタント。薬師堂グループのCI構築に携わる過程で五本能人生論に出会い、「人間は何のために生きているのか?」という壮大なテーマの泥沼に陥る。
株式会社デザイントランスメディア 代表取締役。



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